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2010年07月23日

ガスを集めた男

憩いの公園で気持ちよく過ごせるのも、誰かがしっかりと清掃してくれているからである。
登山道をフーフー言いながらも登っていけるのも、誰かが地道に修復してくれているからである。

この3連休、南ア北部、南八ヶ岳周辺では天気が良かった。

それは独りの男が身を削ってガスを集めた結果だ、ということはあまり知られていない。


その男、悲しくも連休真ん中の日だけ、丸1日空いていた。サラッと山に行こうとは思っていたが、体調も芳しくなく、また有名所はどこも混雑してそうで行き先に悩んでいた。
結局、前日夜10時頃からパッキングを開始し、本末転倒だが、その後行き先を決めている。空いていて、南アに念が送れるところ、すなわち前衛の「雨乞岳」である。
念を送る内容と、山名は一切関係無いので誤解しないで欲しい。

高速の渋滞に巻き込まれぬよう早朝に出立したが、あまり早く山頂に立ちたくないのか、PAやコンビニで時間を潰しノソノソと石尊神社からスタート。

風が全く吹かない樹林帯の道を、汗だくになりながら登っていく。

初めの休憩で、切り忘れた携帯に写メが届いたようだが、その後もやたらと休憩を繰り返す。ペースが遅すぎるのではないか。途中すれ違った男性にも「これから登るのですか?」と心配されている。ゼーハーと荒い息をつきながらドカッと腰をおろし、今来た道を振り返ると、平坦な道がずっと続いていた。愕然とする男。山頂までは無理そうな疲れ具合である。それでもフラフラと歩き始め、山頂直下の登りに差し掛かった。最後の最後に標高差200mの坂が待っていたのである。

ゼーハー、ゼーハー
「・・・何でこんなとこ来たんだっけかなぁ」
ぼやきながら、しきりに高度計を見る男。あと150m。

ゼーハー、ゼーハー
「うげぇ、もう無理だ・・引き返すか・・・」
折れそうな心に火を灯したのは、途中届いた写メ。どうやら真っ青な空での山頂写真だった。
「携帯なんで表情まで見えなかったけど、きっと標高より鼻高々な表情に違いない! クゥ~、辛いだけで折れるかよぅ!」
体を揺らしながらもムキになって登る男。あと100m!

ヒーハー、ヒーハー
「あ、あれが山頂か? いやいや、あの先にまだピークがあるかもしれん。折れんぞ、俺は折れんぞ!」
ガッカリして折れることを恐れる男。あと50m!!

ハッハッ、ハッハッ
山頂に近づくにつれ、異様に沸いて出たショウジョウバエみたいな小さな羽虫が、男の口の中、目の中に吸い込まれていく。
「ウゲッ、ペッ、ペッ。なんだこの山! くそっ、もう来ねえぞ!!」
逆切れも甚だしい男。しかし、あとちょっと!





や、やった、着いた!

もう、1mも登ってやんないぞっ!


CT4時間20分のところ、6時間弱もかけ、心が折れそうになりながらも頑張って登ってきた。

























ガスを集めた男

「あの、ところで何か見えるんですかね、普段は?」
誰もいない山頂で、呟く男。


とりあえず、目的のガスを集めることには成功し、満足げな男。謙虚である。
しかし、甲斐駒越しに北岳へ念を送ろうとしていたのに、方向がさっぱりわからない。地図を出すのも億劫らしい。

その見るからに下山できる体力が残っていない男は、あらぬ方向を探索していたが、気に入らなかったのか戻ってくる。
そして翌日の事も考えたのか、なんと下山を開始。
したのもつかの間、途中でやはり諦めたのか、違うルートにフラフラと歩き始める。










ガスを集めた男

違う山にも影響がでてしまったようである。
してやったり、いやいや、残念がる男。










ガスを集めた男

もうフラフラなのでビバる男。
寝ている途中、熱が出てきたらしく、棺おけの中で脱いだり着たりを繰り返す男。
ウンウン唸っていたが、そのうち寝てしまい、朝を迎える。










ガスを集めた男

どうやら、今日は天気がいいらしい。

鼻水が止まらないので、手鼻をかみながら下山する男。非常に汚らしいが、弱っているので勘弁してあげるべきであろう。




無事下山し、快調に流れる高速から、甲斐駒が綺麗に見える。

「まっ、俺のお陰だけどね。恩に着せる気はないけどね。」

鼻水を垂らしながら満足げなこの男のことを、残念ながら感謝する人はいなかった。





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この記事へのコメント
その男、一身にガスを呼び雲をまとい雨を受け、
あげくの果てに山中にちから尽きて行き倒れ
手鼻をかみながら下界に降りて来るありさまは、
浄瑠璃史の『曽根崎心中』で露天神の森に命を捨てる、
お初徳兵衛の最期以上に、涙を誘うってもんじゃ、ありませんか。

しかし石尊神社からって、どえらく距離がありませんでしたか。
Posted by いまるぷ at 2010年07月24日 07:54
いまさん、こんばんは~

ええ、まさに棺おけから永久に出てこれない、土に還ってしまうところでしたよ、その男^^
こんなに体調不良だとは気づいていなかったようですけどね、お山様を舐めてはいけませんね。

>どえらく距離がありませんでしたか
結構、横移動もありましたね。但し山慣れた方だと2時間半かからずだそうです。(^^;
新しい登山道が別に整備されていたので、こちらはかなり荒れているのかとビビッていたのですが、かなり踏まれていて、静かな道を好む人が多いのだなぁと感じましたです。
Posted by らんどらんど at 2010年07月24日 19:04
いやいやどうも有難う御座いました
しっかりとその恩恵を受けた山行きでした

ひっそりと誰にも気づかれずに誰の指示だかわかりませんが
無事任務を全うされたのですね
もう涙無しでは読めませんでしたよ(笑)

自分も<晴れ男>に磨きをかけておりますので
9月あたりには是非直接対決といきますか!
Posted by トオル at 2010年07月25日 14:54
ククク、おかげさまでいい天気でしたよ。ええ

なんたって南アは天空ですから、普段の行いが良くないと登れないんですよ。

とはいうものの、棺桶で朽ち果てなくて良かったですな。
あそこから引き取りに行くのも大変ですからねぇ。

ただ、棺桶を持っていったということは、確信犯ですな。ふっ

次回も行くときには事前連絡しますから、雨とガスを集めてくださいな。ヽ(゜◇゜ )ノヽ( ゜◇゜)ノ
Posted by 標高より鼻高々な男 at 2010年07月25日 18:45
トオル先輩、こんばんは~

まさか先輩が、甲斐駒に行ってるとは思いませんでしたが、お役にたてたようで何よりであります(^^;
まるで沸くようにガスが流れついてきてたんですが、先輩の記事の写真を見て、納得したわけであります。俺ってやっぱすごいなぁって(泣笑)

>是非直接対決といきますか
物には順番というものがありますからね、
先ずは、ガス男小結のチャイさんと対決して勝って頂かないと(笑)
で、9月頃、どっか行きましょう、雨男の監督が勝つ気がしてますが(ウフフ


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ピノキオ監督、こんばんは~

今回は、北岳・甲斐駒・雨乞岳 と1直線に並んだジェットストリームアタックが炸裂しましたね!
ちゃんとそれぞれ身分をわきまえた標高だったようですし^^

ちなみに確信犯ではなく、いつものエマージェンシーキットですから。
ええ、棺おけも頭だけのヤツで胴体はないんですよ、おほ、おほ、おほほ(^^;;;;;;;

>次回も行くときには事前連絡しますから
何言ってるんですか、今年の「次回」は一緒にロープウェイですよ。
ところで、ロープウェイって、途中ガスが濃くて止まるってこと無いですよね?
Posted by らんどらんど at 2010年07月25日 23:34
さすがしぶいところ行きますね!
ビバ地は水○ナギとかなんとかいうところですか?
雁○原に似てるようにも見えますが。どちらにしても素晴らしい展望のビバ地で、泊まると悟られないためにそろえたUL装備が最高の働きをしたこととお喜び申し上げます。
Posted by kimatsukimatsu at 2010年07月26日 13:53
きまっつあん、こんばんは~

「さすがにしぶといですね」と誤読しました(^^;
そうそう、良くご存知ですね、ナギナギなところでございます。

が、誤解されているようですが、不測の事態に備えた通常装備なわけであります。
暑い日だったので、警戒して水分も4L近く持ってきましてね、、、、
「備えあれば憂いなし」が、「備えすぎて憂い実現」だったわけでありますよ(><)

で、チャリハイのレポ、お待ちしておりますよ^^
Posted by らんどらんど at 2010年07月26日 23:06
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